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10年後も変わらず使い続けられる器
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- 育てた漆で、作る、直す、10年計画。今回のプロジェクトを通して手にして下さった器や、作って下さった器、直して頂いた器を手をかけながら使い続け、10年後、今年植えた漆でまた直す。そんな長い10年計画を立てました。
「毎日使う、変わりゆく、愛しい漆器」
使うことで育っていく漆器の豊かさを、一緒に感じて頂ければ幸いです。 -
普段の活動について
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- 初めまして。urujyuとして活動している、清水愛と申します。
私が漆の道に入ったのは2002年、大学を卒業し、社会人になってからでした。
旅行で訪れた香川県立美術館で漆芸の人間国宝音丸耕堂先生の作品を見たとき、漆芸の色彩豊かな表現に、「どうやってこんな美しいものができるのだろう。どうしてもその技術を知りたい!」と思いました。
最初は漆教室に通い、その後、漆工芸と修復専門の工房で弟子入りしました。そして、2008年に独立し、漆器を作る「漆作家」の活動と、漆の技術を伝える「漆・金継ぎ教室」の活動を始めました。
活動を続けて2015年、これまで学んだ漆工芸や漆・金継ぎ修復の経験から
「今を生きる作家の手で漆の文化を未来に伝えたい」
とurujyuというブランドを立ち上げました。
urujyuの伝えたい漆の文化は三つ。 -
①漆を暮らしの中に活かす文化
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②漆の技術
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③国産漆
- この三つを目標に「毎日使う、変わりゆく、愛しい漆器」をテーマに、現代の暮らしに合う漆器を作る活動と、漆・金継ぎ教室を行ってきました。
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活動の中での環境の変化
- 私は、urujyuとして活動してきたこの6年の間に結婚し、二人の子供の母になりました。
そして、新しい家族との暮らしの中で私自身も変化し、「漆の多彩な表現を楽しんでもらう器」から「家族との暮らしで使いたい器」「家族と共に育っていく器」へと作りたい器が変わってきました。
そこで、urujyuは2018年より「シンプルでナチュラルな金継ぎ」を伝えることをメインに活動し、子育てと暮らしの中で、作りたい器が形になるまで漆作家の活動をお休みすることにしました。
現在、creemaでは、2008年から続けている金継ぎ教室から生まれた、ご自宅で簡単に金継ぎが始められる「urujyuの金継ぎキット」「Kintsugi Seed」を販売しています。 -
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urujyuとしての夢
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- urujyuの名前を漢字で書くと「漆樹」です。いつか漆の大樹のように、漆の文化を未来に伝える存在になりたいとの思いからつけました。
2015年に立ち上げた時から、自分で漆を育てることが夢でした。そして、その夢を叶えるため、2020年に京都の美しい山里、美山町に住まいを移し、漆の木を植え始めました。自分がこれまで使ってきた漆と、これから使っていく漆を自分で育て、そしてこれから漆を始めたい方にも受け渡したいからです。 -
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漆は木を植えてから、採取できるまで10~12年かかるといわれています。
urujyuが2020年の秋、最初に植えた漆は20本。その内8本の新芽を鹿に食べられてしまいました。木を育てることは、決して簡単ではありません。
2回目は、今年の春に、会津の高校生が種から育ててくれた苗木を35本植えました。
過疎化の進むこの地では、継ぎ手のない畑が増えていました。漆の木を植えたいと人づてに訪ね歩き、竹や萱が覆い茂った休耕地を借りることができました。まずは、その草刈りをして、小さな苗木を植えました。これから、草の勢いが増す季節が訪れます。漆畑の草刈りは年4回くらいです。そして、鹿や猪に新芽を食べられないよう、ネットや網で苗木を守ることも必要です。urujyuはこれから毎年、生命力あふれる動物や草木と向き合いながら、毎年漆を植えて育てていきます。 -
urujyuの夢を支えてくれたのは
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- 私はこの地に、漆の木を植えたいと夢を持ってやってきました。そして、この場所にはその夢に耳を傾け、背中を押してくれる人達がいました。その人たちの夢は人と自然の共存する、里山の美しい景色を守っていくこと。私は漆を植えることで、私の夢を受け入れ、背中を押してくれた人たちの夢も一緒に叶えていきたいと思います。
今回この獣害対策や草刈り、次年度に植栽予定地の整備の費用のご支援に充てたいと思っています。そして、将来育てた漆を作品や金継ぎキットを通して皆さんに受け取って頂くという長い夢をサポートして頂きたいと思っています。 -
リワードについて
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- 漆作家としての活動をお休みしていた3年間。子供との暮らしの中で、私の見つけた「使いたい器」はシンプルな拭き漆でした。子供が生まれたときに作った拭き漆の器やスプーンを、自分で拭き直して使い続けてきました。今回のプロジェクトでは、私の見つけた「使いたい器」を皆さんに受け取っていただき、直しながら使い続ける10年を楽しんで頂けたらと思います。
そして、私が子供の器のお守りにしている「金継ぎ」です。離乳食が終わって、子供が使い始めた陶器のお茶碗を、これまで5回お直ししました。治す度に、「キラキラが増えた」と喜んでくれた子供の笑顔が私の宝物になりました。皆さんも大切な器を直し、これから先10年後もずっと使い続けてみませんか。 -
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拭き漆のお皿
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- 木目の見える温かみを感じる器です。軽くて丈夫なので、お子様からお年寄りまで安心してお使い頂けます。定期的に「拭き直し」することによって、10年後もずっとお使いいただけます。今回はナチュラル(茶)、赤、黒の三色からお選びいただけます。
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漆を暮らしに活かす 拭き漆キット
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- 拭き漆をご自宅で始めて頂けるキットです。キットに付いている白木のお皿の他に、ご自宅のお箸や木のカトラリーなどの補修もして頂けます。
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拭き漆の応量器
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- もともとは禅僧のお坊さんが食事に使う六組椀です。本来なら、しっかりした漆塗で作られる応量器を、気軽に使える拭き漆で作りました。定期的に「拭き直し」することで、10年後もずっとお使いいただけます。
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金継ぎ直し(小さな欠け1箇所)
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- 器の小さな欠けのお直しをさせて頂きます。金が銀からお選びください。
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金継ぎ直し(ぱっくり割れ、二分割)
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- ぱっくり二つに割れた器の直しをさせて頂きます。金か銀からお選びください。
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美山の野放し茶
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- 2020年から美山に移り住み、休耕地を借り、漆の木を植え始めたurujyu。 この春までに漆を植えたのは、萱場、栗畑、笹藪、そして家の周囲。 そして、この秋から漆を植える場所を探して出会ったのは、かつての広大なお茶畑。 人の手を離れ、高く伸びる茶の木。今年5月、そのお茶を摘み、手揉み、天日干しの お茶を作りました。
日本の原風景が残る美山町は、ほんの十数年前までお茶の一大生産地でした。今も5月になると露地の茶ノ木からお茶を作る暮らしが息づいています。
「漆の木を植える場所の茶木だけの抜き、その茶畑はそのまま活かす」
私の漆の木の夢と、お茶を作り続けてきた地域の生活文化も未来に繋げていく。
2021年6月urujyuの新しい夢が始まります。 -
終わりに
- 漆の道が、私の人生で進む道。そう思えるものに出会えた幸せと、漆の技術を教えてくれた人への感謝。そして、私が、漆の仕事を続けられるのは、誰かが漆の木を植え、育ててくれたから。2015年、urujyuを立ち上げた時「漆にありがとう、漆の全部にありがとう、漆につながるすべての人にありがとう」の気持ちでいっぱいでした。
人が漆を使い始めたのは縄文時代。そして、金継ぎに使われる日本の蒔絵技法が生まれたのは奈良時代。そんな遠い昔から、漆を暮らしに活かしてきた先人からの知恵のバトンを、私もこれからの人生で、未来に繋げられる人になりたいと思っています。どうぞ、このプロジェクトを通して、皆さんもそのバトンを受け取る一人になって頂けたら嬉しいです。読んで下さってありがとうございます。